教科書  ※長い文章です!

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 前回「項羽と劉邦」の歴史書の中で、その『劉邦』を尊敬していることを書かせていただきましたが、現在の私の中の『劉邦』は、尊敬ではなくとても魅力ある参考になる人物となっています。

『劉邦』が生きていた時代は、中国の戦国時代が400年以上続いた時代(日本の戦国時代は約100年くらいです)で、人々がいつ殺されるか分からず、心からの願いが「ゆっくり眠れてお腹一杯ご飯を食べたい」ことだったそうです。現在の私達の生活ではいたって当たり前のことですよね。逆にゆっくり眠れず好きなご飯が食べられなければ、すぐテンションが下がってしまいます。そのような戦国時代を終わらせ、漢国として400年という長い時代を高祖として築いた『劉邦』に若い頃はとても憧れていました。

『劉邦』は特に才能もなく40歳頃になるまで自由気ままに生きていたといいます。しかし、不思議といつも『劉邦』の周りには人が集まり、普段は『劉邦』をダメな奴だと思っていても、いざ揉め事が起こると皆『劉邦』を頼っていました。その「劉邦」が万里の長城建設の任務を失敗し、罰が怖くて逃げだしたことから人生が大きく変わっていきます。

最初は小さな盗賊集団として生きていましたが、周りの同じような小さな盗賊集団が『劉邦』を頼りに集まりだし、徐々に大きな集団となっていきます。またその集団の中には、盗賊だけでなく勇敢な武将や優秀な軍師など様々な立場の人達も集まってきました。その人達の共通していることは、皆それぞれの集団からあぶれた者達であり、プロスポーツ球団であれば、戦力外を受けた選手達が集まった球団といえます。しかし、その烏合の衆は『劉邦』の人間的魅力によって纏まっていきます。

『劉邦』のライバルに全てに於いて優れている『項羽』がいます。この物語の後半はこの『劉邦』と『項羽』の戦いとなりますが、100回戦って99戦『劉邦』が負けてしまいます。100戦戦う前には、『劉邦』の行なったある行為が『項羽』の逆鱗に触れてしまい、『劉邦』は『項羽』の前に引き出されてしまいました。この時代です!当然『劉邦』は『項羽』に殺されるはずでした。しかしその時『劉邦』のとった行動は、『項羽』の前で泣きじゃくって命乞いをしたといいます。その姿を見て『項羽』の軍師は逆に危ないと感じ、今殺しておかなければとても脅威になると申し出るのですが、『項羽』はその情けない姿から取るに足らない人物ととらえ、『劉邦』を逃がしてしまいます。『項羽』からは絶対的な自分自身への自信からの行動であり、また『劉邦』からは「此処では死ねない」という自分自身への使命からの行動だったと言えます。その頃の『劉邦』には、以前のような適当な心はなく、人々の思いを強く感じ、中国を一つに統一するという大きな志を持っていたのだと思います。「小さなプライドより大きな志!」私にとってとても参考になる生き方となっています。

『劉邦』は『項羽』に最後の一回だけ勝ちます。そしてその一戦が長い長い戦乱の世を終わりとしました。結局『劉邦』のような裏も表もある人間味が強い者が天下を治め、平和な時代を築いて行くこととなります。時代が『劉邦』を求めたのだと思います。

とても長い話となってしまいましたが、最後に「項羽と劉邦」の結末を書かせていただきます。

『劉邦』にとって『項羽』は、最後までとても恐ろしい存在でした。その恐ろしい存在がいなくなり、全てが自分のものとなったことで『劉邦』がとった行動は、今まで自分と共に命を賭けて戦ってきた家臣達の「粛清」でした。とても活躍し優秀な家臣ほど何か汚名を着せて「粛清」したといいます。『劉邦』は『項羽』だけでなく、自分の家臣までも恐ろしい存在と感じていたのだと思います。そのようなことからも『劉邦』は弱い人間だったといえますが、結果として『劉邦』は漢国400年の高祖として祭られていきます。

とても無情に感じますが、それが「項羽と劉邦」という本当に長い物語の結末となります。この物語には『項羽』と『劉邦』以外にも、『韓信』『蕭何』『張良』『樊回』『盧碗』『呂稚』『項梁』『范増』『胡亥』『章邯』『趙高』など本当に多くの人物が登場します。皆、良くも悪くも様々な人達が登場し、いまだに一人一人の個性や物語のエピソードを思い出します。ですが、ここに挙げた人物の中で誰一人「幸せ」な最期を迎えた人はおりませんでした。結果として平和な時代を築くための「人柱」となったのだと思います。「項羽と劉邦」の歴史からは、現在の私にとって、人の『幸せ』の大切さを心から感じることができる教科書のような存在になっています。

※本当に思い入れが強く長い文章となってしまいました。最後まで読んでいただきありがとうございました<(-_-)>

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