恐ろしいこと

日常

 誰にでも、「今の仕事を辞めて新しい仕事に挑戦したい」と思うことがあると思います。かつて私は、「葬儀屋」で働こうと思ったことがあるんです。その切っ掛けとなったのは、映画「おくりびと」を見たことに影響されました。

映画「おくりびと」は、約17年前に公開された作品で、本木雅弘さんが主演を務めました。遺体を棺に納める「納棺師」という職業を描いた作品となります。主人公は、プロのチェロ演奏家でしたが、楽団解散を切っ掛けにその仕事に就くこととなります。そして、最初の仕事は、夏場自宅で腐敗した老人の対応から始まります。またその仕事に就いたことを妻に隠していたのですが、やがて知られてしまい、如何わしく、気持ち悪い人として罵倒され家から出ていかれてしまいました。 そのような事もあり、悩み苦しみの葛藤の中で「納棺師」を続けて行くこととなります。

話しが変わりますが、先日まで、「エンゼルフライト ~国際霊柩送還士~」という米倉涼子さん主演のドラマを見ていました。海外で亡くなった日本人の遺体を日本へ送還する「国際霊柩送還士」という職業を描いたドラマです。最初このドラマも、海外のスラム街でリンチ死した青年や、テロ組織の機関銃で顔の半分を飛ばされてしまった女性等を日本に送還する対応から始まります。とてもショッキングな場面でした。

『 死 』というものを想像すると、とても怖く、恐ろしいものに感じてしまいます! 家族や知人、ましてや自分自身に近づいて来ないよう、毎日平和な日々を心から願っています。しかし、『 死 』は必ず訪れます。全ての人に訪れます! 口で言うのは簡単ですが、私の身にも必ず訪れます!! 本当に恐ろしいことです。

「おくりびと」も「エンゼルフライト」も、初めて関わった新人職員は、死者を怖く、恐ろしいものと捉え仕事をしていきます。しかし、長く関わっている職員たちは、淡々と、そして丁寧に仕事をしていきます。これは、死者に対して慣れてしまったことではなく、亡くなった方の想いを受け止め、心から敬意を持って接している姿なのだと、新人職員たちは次第に気づいていきます。暴行を受けて亡くなった青年は、なぜスラム街で生活していたのか。顔を撃たれて命を落とした女性は、どんな気持ちなのか。私自身とても感情を揺さぶられてしまいました!

全ての人にはそれぞれの思いがあり、そして全ての人には親、子供、夫、妻、兄弟、姉妹 などの家族がいます。国際霊柩送還士は、亡くなった方の想いと、その家族の想いを繫げるために、可能な限り亡くなった方の姿を整え、綺麗にしてご家族のもとに帰してあげます。その様は本当に美しく、そして救われた思いとなりました。

「おくりびと」は後にアカデミー賞の外国語映画賞を受賞し、「エンゼルフライト」も映画化になると先日発表されました。どちらも『 死 』を描いた作品ですが、それと共に『 生 』を描いた作品でもあり、人の生き方を強く感じさせられる作品となっています。観ていただければ必ず死生観が変わると思いますよ。

最後に…。 ここまで語ってしまいなんですが、今もし「国際霊柩送還士なりませんか?」とスカウトされましたら、私は丁寧にお断りさせていただくと思います。美しい仕事と本当に分かっています! ですが臆病な私にとって、まだちょっとハードルが高い仕事ですね (^_^;)

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